夢を見た。

 特に意味はない。夢に意味はない。


 覚えているのは、目の前に見るからに怪しい液体が入った容器が置いてあり、どうやら手を突っ込まなければならないという強迫観念にまず囚われたことだ。
 はて、その通りにすると、どんな原理か手に網目状の細かい傷がついた。少しするとその傷から病原菌が入ったかのように手が腫れてきて、ミニチュアボンレスハムのように手がパンパンになった。それが破傷風なのだと理解できた。夢だから。
 いまどき霜焼けなんて経験した人は少ないかも知れないけれど、全く同じような痛みと痒みが手を襲い、自分はもんどりうった。


 ふと気づくとまた別の容器が置いてあることに気がついた。
 手を入れて浸せるような浅く広い先と似たような容器の中には、スポンジらしき物体が緑色の液体に浸って入っていた。自分にはそれがリステリンにしか見えなかった。いや、確信した。夢だから。
 頭の中ではリステリン=殺菌という等号が成立していて、全く間を置かずに自分は99%の殺菌力に賭けることに決めた。


 手を入れてから、それが恐らく染みるだろうという当たり前の予想が立ったが遅かった。痛みが倍増したような感覚だった。霜焼けと同じように「痛気持ちいい」というのだろうか、血行が良くなる感覚と同じ状況になって、痛みを感じつつも手に刺激を与えることを止められず、一生懸命に揉んでしまった。


 いつの間にか直ったのか腫れも痒みも痛みも引き、元通りになったように見える手を掲げて、この夢に果たしてどんな意味があるのか、なぜ見たのかを少しの間考えた。


 やはり最初の結論にたどり着いた。